上野の杜ブログ「火事と喧嘩は江戸の華」

不忍池の下町風俗資料館にて企画展「下町の火事と防災 江戸から学ぶ火の用心」が開催中です。

「火事と喧嘩は江戸の華」!

人々がたくさん密集している江戸の町には火事が頻繁に発生していました。現代社会においては、火事の発生件数も少なくはなっておりますが、備えあれば憂いなし!いつもどこか頭の片隅においておきたい防災意識でありたいものです。

今も、上野界隈の下町地域では冬の風物詩として地元の消防団や青年団が火の用心〜、と拍子木をカチカチと打ち鳴らして歩いているのをよく見かけます。

本企画では下町の暮らしにとって忘れてはならない火事の恐ろしい点から、火事によって発展した下町ならではの防災の特色が展示されています。上野広小路も火災の延焼を防ぐための火除地として大火の度に道が大きく改造されたのを知ると上野のまちが一気に違った視点から観察されます。防災の観点から見る上野という切り口でまち歩きをして見るのも面白そうです。

西郷隆盛像も昔は、待ち人のチラシが像の前面に貼られていました。今とは異なり、LINEもメールも、電話もない時代、大火や災害で離れ離れになった人々が集まるのは、そうした大きな目印にせざるを得なかったのだと思います。

閑話休題、さて今回の展示で一番、面白かったのは江戸の火消したちの行動でした。今は、火事が起これば119番をして、消防車を呼び、消防士たちがホースから水を出して消化するというイメージがあります。この当時はもちろん、排水ポンプもありませんし、人力のバケツリレーも大火の前には焼け石に水だったろうと思います。では、どのようにして、家事を消したのか、私自身その消し方に大いに驚きました!

それは、燃える前に建物を壊し、火の燃え広がりを防ぐというものでした。

ひとたび火災が発生すると、火は広範囲に延焼し、江戸の町全体を脅かします。その被害を最小限に食い止めるために苦しい決断をせざるを得ないことも多々あったのかと思います。ちなみに、あのくるくる回すイカの足のような道具は火の粉を避けるためのものでした。色々と知っているようで、全く知らない江戸時代の防災文化が大変勉強になりました!

興味深かったのは、こうした江戸で頻繁に起きる火事が江戸市民のメンタリティーにも影響を与えた点です。どうせ燃えるのならば、家財を溜め込む必要もない、という思想は「宵越しの金は持たない」という江戸っ子気質にもつながったというものです。火事が起きる度に建築関係の経済が潤い、雇用も生まれました。江戸は火事とともに成長する焼け太りの町とも呼ばれ、善かれ悪しかれ、こうした点からも火事は江戸の華と言われる由縁なのだと思いました。

江戸だけでなく、明治以降も大正12(1923)年の関東大震災、昭和20(1945)年の東京大空襲と二度も大規模な火災による被害を受けた歴史があります。火事を起こさないための様々な防災の備え、日ごろ忘れがちなものにも、実は防災の知恵が込められていると、唸らさせられる展示です。江戸から現代まで続く防災の歴史をご堪能ください。

おまけ

16時を過ぎたあたりに、蚊帳を日本家屋に貼るデモンストレーションもご覧になることができます。職員の方のレクチャーは大変わかりやすく、色々な質問にも答えてくださるので、ぜひお立ち寄りください。会期中、毎週土曜日午後2時より学芸員によるギャラリートークもございます。展示資料の見所など20分ほどのレクチャーになります。


2階の端の方にある昔のパズルコーナーにて、普段できないものの、ちょっと組み立ててみましたら、なんと!できました!苦節3年にして解くことができ、とてもうれしかったです。隣のパズルはまだまだ歯が立ちそうにありませんでしたが、引き続きチャレンジしてまいります。

会期

2019年7月2日(火曜日)~9月8日(日曜日)

開館時間

午前9時30分~午後5時30分(入館は午後5時まで)
※うえの夏まつり期間中(7月13日~8月12日)は、午後7時まで開館時間延長(入館は午後6時30分まで)

会場

下町風俗資料館2階展示室

休館日

毎週月曜日(祝休日の場合は翌平日)

入館料

一般 300円(200円)
小・中・高校生 100円(50円)
※(  )内は20名以上の団体料金
※障害者手帳、特定疾患医療受給者証の方と、その介助者は無料。
※毎週土曜日は台東区内在住・在学の小・中学生と、その引率者は無料。

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