オリパラ狂想曲、丹下健三にザハを思う

パラリンピックもいよいよフィナーレを迎えました。何かと新型コロナで慌ただしいオリパラでした。

ザハ・ハディドの建築問題も色々あったと諸々振り返っておりますと、興味深い展示がございました。時勢がらテーマにもあった展示ですのでひとつご紹介をいたします。

今、湯島にある国立近現代建築資料館にて丹下健三展が開催されております。旧岩崎邸に丁度隣接しており、岩崎邸の方からも入館可能です。その際にはチケットが必要となりますが、表玄関から入場すれば無料です。

丹下健三は、日本では「世界のタンゲ」と言われたように、日本人建築家として最も早く日本国外でも活躍し、認知されたひとりです。第二次世界大戦復興後から高度経済成長期にかけて、多くの国家プロジェクトを手がけ、磯崎新、黒川紀章、槇文彦、谷口吉生など世界の名だたる的建築家を育成した、まさに日本現代建築の父とも言えるでしょう。

今回の展示は、戦前から万博までの丹下建築が当時の資料や写真、模型をもって紹介されています。全体は6章立ての構成となっております。

1 戦争と平和
2 近代と伝統
3 戦後民主主義と庁舎建築
4 大空間への挑戦
5 高度経済成長と情報化社会への応答
6 五つのキーワードの統合

※撮影した写真でミニ建築ツアーもできます。リモートでご覧になりたい方はこちらをご覧ください。

戦争と平和のコーナーでは、丹下が第二次世界大戦とどのように向き合ったかが読み解かれます。一般的に近代建築は機能主義を採用し、生きている人々の生活に寄与することを目標としますが、丹下は、戦争を生き延びた市民と戦争で亡くなった人々を結びつける建築を掲げました。私は大変不勉強ながら、丹下が広島平和記念公園を作った建築家であることを知りませんでした。


近代と伝統コーナーでは、丹下がル・コルビュジエやワルター・グロピウスといった巨匠たちから何を学んだのかを伺い知れます。卒業設計ではル・コルビュジエによるソヴィエト・パレスなどコルビジュエの学ぶべき点を取り込み、設計に反映させています。

戦後民主主義と庁舎建築コーナーでは、米軍の空襲によって焼け野原となった都心部に多くの市民が集い、政治参加を体感できる庁舎をいかに生み出したたかが垣間見れます。戦前のいかめしい建築から市民にとって親しみある建物を目指しました。

大空間への挑戦では、丹下が構造家・坪井善勝とパートナーを組み、様々なシェル空間を実現したプロセスが紹介されます。当時、鉄は高価な素材だったため、工費の安いシェル構造によって大胆な造形を目指すことになります。試行錯誤の末に大空間がいかにして生まれたのか、その苦労と努力がしのばれます。

高度経済成長と情報化社会への応答では、高度経済成長期における丹下の都市ビジョンが注目されます。東京への一極集中の流れに対して、線型の都市モデルの必要性が主張され、工業化社会から情報化社会に変容していく先見的な知見が示されます。三次元的な都市建築が次々と丹下の手により生み出されます。日本万国博覧会のマスタープランは今見ても当時の夢と希望とエネルギーがありありと感じられます!


そして、本展示のメインともなる五つのキーワードの統合です。ご存知、あの有名な丹下の最高傑作、国立代々木競技場が紹介されます。セクション 1から5まで紹介してきた丹下のデザイン手法が国立代々木競技場で見事に統合され、現在も維持されている点に触れます。

圧巻の国立代々木競技場の模型。都市ごと作られてます。メンバーで建築家でもあるL中嶋はしばしば「建築とは都市に創造力という爆弾を落とすことだ」と語っておりますが、まさに東京・代々木に都市の創造性を牽引していくエネルギーの塊が落とされたようです。建築はまさにかくあるべき類のものなのかもしれません。

2階からは丹下の業績が一望できます。この建築資料館の映えスポットでもあります。

より精巧な模型が展示されており、上から見るとまさに勾玉のようです。代々木の大地に宇宙船が降り立ったかのような建築です。丹下の中にある日本の魂のようなものがありありと感じられました。近現代建築というと欧米に染まった建築のように見えますが、その精神性において丹下は戦前から代々木国立競技場まで常に日本の伝統文化というものを自身の建築のコアの部分に据えていたように感じました。

高度経済成長の中でのこうした国家プロジェクトであれば予算も潤沢にあったのだろうと思っておりましたが、最後の丹下健三のお弟子さんたちのインタビューを見て驚きました。予算は常になかったといいます。少しでも予算を削れるよう建具ひとつにこだわり、予算を抑えたといいます。偉大な建築家だからこそ、細部の細かいところまで疎かにせず監督するのですね。弟子たちの進捗状況や予算の具合を肩越しにのぞいていたというエピソードにほっこりしました。丹下健三を知る生の声から親近感を感じました。

以上、展示の構成を順々に見てまいりました。丹下の戦前から戦後にかけての建築の思いや考え方を理解できる展示でした。

未だ新型コロナ感染症の拡大が収まらぬ状況ではございますが、機会がありましたらぜひお立ち寄りいただければと思います。こちらの展覧会ぜひおすすめてございます!!!

※撮影した写真でミニ建築ツアーもできます。リモートでご覧になりたい方はこちらをご覧ください。

丹下健三:戦前からオリンピック・万博まで 1938-1970

2021年7月21日(水)–10月10日(日)
開館時間:10:00~16:30
休館日:会期中無休
会場:文化庁国立近現代建築資料館(東京都文京区湯島4-6-15 湯島地方合同庁舎内)

詳細情報はウェブサイトよりご確認ください。
ウェブサイトはこちらから

東京文化ライオンズクラブ
L一ノ瀬健太

「BON FES TOKYO 2021 ~うえの不忍夢祭り」開催のご報告と御礼

お世話になっております。L深澤です。

この度、8月28・29日に「BON FES TOKYO 2021 ~うえの不忍夢祭り」をオンライン上で開催いたしました。

「日本の夏祭りで、世界を繋ぐ。」

このコンセプトの裏には、新型コロナウイルス感染拡大の影響によって、異例の事態となってしまった2020東京大会がありました。今年、2020東京オリンピック・パラリンピックは海外からの観光客が制限され、無観客でのスポーツ大会の開催となってしまいました。オリンピック・パラリンピックは世界平和・共生社会のための祭典にも関わらず、例年に比べその目的達成は非常に困難です。

そこで、オンライン上で「世界が繋がる、新たな日本の夏祭り」を若者から届け、世界平和や共生社会への願いや感動を発信・共有したい。コロナ禍で活動や楽しみの機会を失ってしまった人々に、その機会を届けたい。そのような想いで開催に至りました。

和太鼓の演奏の様子

また、上野発祥の本イベントを、客足が途絶えてしまった上野の商店街を復活させる第一歩とすることも目標の一つでした。日本の代表的な文化の街「上野」やその商店街の魅力を世界に発信する番組も制作しました。

テーマは「和洋折衷」。日本の伝統的な夏祭りに現代・海外文化を取り入れ、年代や国籍・人種に関わらず多くの方々が楽しめる内容となりました。Zoomの盆踊りでは、参加者が自宅で盆踊りを踊り、画面越しに世界との繋がりや一体感を得ることができます。楽曲は日本の伝統曲から、流行の邦楽、洋楽まで扱います。YouTubeでは、書道パフォーマンスや和太鼓演奏、トランペット演奏や合唱など日本と世界を繋ぐオンラインライブを実施しました。

日本の和食文化を紹介

創作浴衣コンテストでは、現代の浴衣の新たな魅力を引き出す作品を、モデルが歩くランウェイで披露します。その他、世界の花火大会や多国籍寿司パフォーマンスなど計9つの企画を実施しました。

創作浴衣コンテストの様子

多くの方にオンラインで来場いただきました

結果、当日は、YouTube Liveではリアルタイムで両日合わせて総視聴回数は1000回を超え、Zoomでも常に50名ほどの参加者にご参加いただきました。

2020東京大会開催中に、東京都公認の文化プログラム「Tokyo Tokyo FESTIVAL」という大舞台で、学生ながらも無事成功を収めることができました。

また、日本人だけではなく、海外からの参加者も見受けられ、私たちなりに「日本の夏祭りで、世界を繋げる」ことができました。

盆踊りも大盛り上がり

この夏祭りを上野で毎年継続させていきながら、オリンピック・パラリンピック後のレガシーにも繋げていきたいと考えています。

このような成功を収めることができたのは、参加者の方々は勿論のこと、出演者やスタッフ、そしてご後援いただいた「東京文化ライオンズクラブ」のおかげだと思っています。

このような機会をいただき、誠にありがとうございました。

来年度以降も継続してまいりたいと思っておりますので、何卒よろしくお願いいたします。

東京文化ライオンズクラブ
L深澤文

L深澤文

盆踊りを通じた国際交流について「BON FES TOKYO 2021 〜うえの不忍夢祭り」

盆踊りの一場面

文化ライオンズクラブYCE委員会所属、今回「盆踊りDJ」として本企画の盆踊り企画責任者として参加させていただきました鈴木慎平です。


皆様のご声援、ご支援の元行われました「BON FES TOKYO 2021 〜うえの不忍夢祭り」は大成功のうち終えることができました。本企画は「温故知新」や「和洋折衷」といった”異なる文化に出会う•尊重する”ことを大切にしながら2019年から続いています。

2019年 うえの夏まつり~不忍夢(しのばずのゆめ)の様子


文化を学び受け継ぎつつ、新たな側面を見出していく…そんな想いの籠った一大盆祭りです。
文化継承と創造をコンセプトとしていますので、盆踊りの選曲にもそんなチャレンジングな想いが反映されています。


“東京音頭”や”八木節”などの誰もが知っている定番曲から”ダンシングヒーロー”や”恋するフォーチュンクッキー”といった盆踊り界でNo.1に盛り上がる曲、そして洋楽での創作盆踊りやインターネット上のアニメ文化を取り入れるなど、古典から新規まであらゆる盆踊りシーンの紹介ができるようにと曲選びにも工夫が凝らしてあります。

配信現場の様子


そのおかげもあり、毎年「非常にユニークで意義深い、ぜひ来年もお願いします」と定評をいただきつつあります。去年は初のZOOM配信(インターネット配信)で勝手もわからずの実施ですが、今年は三年分の蓄積もあり一層進化した盆踊りをお届けすることができたように思います。

今年のポイントとして①オリンピックとパラリンピックを意識して②英語と日本語の同時配信
を行うことがありました。

そのため悪戦苦闘しつつの原稿作成となりましたが、作成する過程で”盆踊りの意義”に何度も立ち返ることになり、「ただ踊るだけでなく日本人自身にとっても学びになるものを」、「自分たちの文化をますます好きになる、学びの機会としても活用されるように」、このように自分たちの活動の意義を捉えることができるようになりました。その過程を踏まえて行われた本番二日間では国籍を問わず様々な方から「とてもユニークでパワフル、知らないことを学ぶことができた(何より楽しい!)」という非常に好意的な感想を頂いくことができました。

•年代の違いや国籍の違いを乗り越えて一つのことを学び実践する。
•上野という町から発信する、これからの日本文化のあり方を体現する


これからの時代の”多文化共生”を考え表現する素晴らしい機会だったと感じます。

配信現場の様子

今回の盆踊り配信で日英両言語で文化発信することの意味と重要性を強く感じました。
特に印象深かったのですが、対訳式のスライドを活用した「学び→実践」の2way形式は外国からの参加者とって普通の盆踊りよりもかえって学びが多かったそうです。

新しい文化交流の在り方として盆踊りを軸としたインターネット上での「学び→実践」式の国際交流は楽しいのではないかと、コロナもまだ収まりきらない現状でそんなポジティブな側面を見出すことができました。

長くなってしまいましたが、盆踊りの選曲と実施から見えてきた事柄をレポートさせていただきました。今年の成功は去年のZOOM配信の経験がなければ存在していませんし、二年連続での盆祭り企画の成功はライオンズクラブの皆様からの暖かいご支援とご助力がなければあり得なかったものです。

多くの若者が協力して配信を行いました



参加者•企画発信者の全ての人が楽しんでくれたこのイベントにご協力いただき、本当にありがとうございました。

続けることの大切さ•文化継承の重要性を実地で体験させていただいております本企画、
来年も文化を守りつつ、今度は2019年のように実際に上野不忍池ほとりにて行えればなと夢が膨らんでいます。これからも一緒に文化発信を、日本から世界へと積極的に取り組んでいきましょう。

今回のBONFES2021へのご支援、本当にありがとうございました。

東京文化ライオンズクラブ
YCE委員会所属 鈴木慎平(盆踊りDJ鈴木)

盆踊りの一場面